愛おしい貴方
空に青が広がる晴天の朝。
高尾は緑間の家の近くで、彼が学校の支度を終え、家から出て来るのを今か今かと忙しなく待ち続けていた。
今日は、二人が恋人になってから初めて二人揃って学校へ行く日だ。
ガチャン。
金属音立てて門が開く音が響く。
「待たせたのだよ。」
頭上から降ってきた長身の彼の声に、高尾は満面の笑みを浮かべながら緑間を見上げた。
そこにある切り長の涼そうな双眸、はっきりした隆鼻、柔らかそうな薄い唇。
彼の顔立ちはいつ見ても完璧だ。
そのあまりの綺麗さに双眸を逸らすことができない。
「高尾?どうかしたのか?何かあったのか?」
緑間の声が耳に入り、高尾はようやく止まった思考から抜け出すことができた。
どうやら突然動きが止まった俺を心配したのか、真ちゃんは眉を八の字にして心配そうにこちらを見つめている。
いつもツンツンしてる癖に、時折見せる彼の優しさに心が奪われそうになる。
(真ちゃん、マジ天使!)
「何でもないよ。真ちゃんってば心配性だなー。てか、そんなに心配してもらっちゃて、俺って超愛されてる!
幸せ!俺も真ちゃん愛してる!超好き!」
緑間から感じた愛。それが嬉しくて、昂ぶった感情が高尾の口から矢継ぎ早に飛び出した。
緑間は込み上げる胸の高鳴りを悟られないよう、伏し目がちになりながら眼鏡のブリッジを二、三度押し上げる。
「べ、別に心配などしていないのだよ。あ・・・、あ、・阿呆め。馬鹿め。」
高尾から『愛してる』と言われた。
(なんなんだ・・・顔が熱いのだよ。心臓の鼓動が変なのだよ。)
緑間は逃げるように高尾から顔をサッと横に逸らした。
赤く染まっているだろう顔を見られたくない。
こんなにも心臓が高鳴っている事に気付かれたくない。
長身で体躯も良い自分がまるで乙女みたいで恥ずかしい。
「真ちゃん。顔、少し赤いね。照れちゃった?」
「・・・・・・」
少し茶化しながら、高尾が問う。
緑間は顔を高尾から逸らしたまま、返答もしない。
ただ、未だ引かぬ顔色の赤が、そうなのだよ、と物語っているようだ。
それを見つめる高尾の双眸は柔らかくなり、口元は緩んだ。
「意地悪してゴメン。真ちゃん。こっち向いて。」
茶化すようではない、高尾の優しい声色で呼ばれる。
少し甘さの含んだ声に引き付けられるように、緑間の逸らされた顔が高尾へと向いた。
困ったような双眸で高尾を見つめる。
色白の頬にはまだ少し赤みが残っている。
そんな緑間の姿に、高尾の心臓も高鳴りを抑えきれない。
「真ちゃんってば、可愛い過ぎ!」
「か、可愛くなんてないのだよ。」
緑間を愛でる高尾の甘い言葉に、緑間は顔に熱が集まるのを感じる。
それに気付かれぬよう必死に悪態を吐く。
そんな彼もやっぱり可愛い。
「真ちゃん。他のヤツにはそんな顔見せないでね。」
高尾は独占欲を言葉に織り込ませて告げる。
口調は柔らかな割に、強い双眸に見つめられる。
その気迫に押され、無意識に緑間は小さく頷いていた。
高尾はそれに満足したように笑みを浮かべた。
「真ちゃん大好き。」
緑間は頬を赤に染め、「煩い」と呟き、双眸を逸らす。
高尾は幸せそうに笑いながら、「そろそろ行こっか」と緑間に声を掛ける。
緑間は頷き、足を動かす。同時に高尾の歩も動き出した。
二人並んで行く学校への道のりは遠い。